中津新聞

2019.04.02

「恩送り」の精神が生んだ、アイデア発信集団|坂本さん・萩森さん・八木さん・伊東さん(中津リバリュープロジェクト/Cante Grande中津本店)


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今回、中津新聞で取材したのは、インド風カフェ「Cante Grande(カンテ・グランデ)」中津本店の坂本秀和さん率いる「中津リバリュープロジェクト」メンバーの皆様です。
アルバイトの学生達に給料以上の付加価値を提供したい、また中津やカンテ・グランデに「恩送り」をしたいという坂本さんの思いから生まれたのが「中津リバリュープロジェクト」です。

取材の申し出を快く引き受けて下さった坂本さん、そして、カンテ・グランデで働いたあとショコラティエとして独立したmon petitの萩森祐介(カカオとクラフトビールとコミュニティのおはなしにも登場)さん、同じくOBの八木佑都さん、親子2代続けてカンテ・グランデに入った現役アルバイトの伊東直哉さんの4名がインタビューに答えてくださいました。

左から 坂本さん、伊東さん、八木さん、萩森さん


【カンテ・グランデ中津本店】

1972年創業のカンテ・グランデは、チャイ(インド式のミルクティー)を出すカフェの先駆けとして、長きに渡って地元の住民だけでなく多くの人々に愛されています。また、この中津本店はロックバンド「ウルフルズ」ゆかりのお店としても知られています。(一部のメンバーがカンテ・グランデのアルバイト出身で、ウルフルズの楽曲「大阪ストラット」にもお店の名前が登場しています。)

入り口が半地下になっており「お店を見つけられない」と言われるほどの独特な外観。入り口に続く階段はジャングルのような緑に覆われ、降りる間もどんなお店なんだろうとワクワクします。

いざ地下フロアに下りてみるとまるで別世界です。広い店内は、エキゾチックな絵画や雑貨が所狭しと並んでいます。壁の一面はガラス貼りになっていて、先ほどの木立がつくる風景がまるで南アジアの異国の森の中で食事しているような気分にさせてくれます。

坂本さんいわく、独特のインテリアや鮮やかな色使いはカンテ・グランデ創業者の井上さんの独創的なユーモアとセンスによるものだそうです。壁に掛けられた不思議なタッチの絵画は井上さんの自作で、傾いていたり、椅子の上に並べてあったりと、とにかくランダムに配置されています。こうして決まったパターンのないインテリアが印象的で心地よい空間を演出しています。



【アイデアを形にする。実行する力を生み出す人育て】

このカンテ・グランデ中津本店では、飲食店としての枠を超えた取り組みが始まっています。アルバイトとして働く学生達に、お金には代えられない体験を提供したい、という坂本さんの思いがあるようです。この店を訪れるお客さま、あるいは未来に訪れるお客さま、そして中津の皆さまにいかに喜んでいただけるか?という取り組みを、自ら考えて実行する学生アルバイト達が現れ、坂本さんは彼らを全力でサポートしています。

「アクションを起こせば、誰かが必ずどこかで見てくれている。そして、もしかしたらこの取材のように、誰かが突然スポットライトを当ててくれるかもしれない。先ずは僕らから始めよう。言うだけ番長にはならないよう、とにかく実行に踏み出してみる。失敗を恐れて何もせず、後から後悔するよりも、失敗から学んだほうが面白くなれる。中津って面白いねとお客様に思って貰えるように、まずは自分たちが、先陣を切って面白くなろうとメンバーに伝えています」と坂本さんが語ってくださいました。

ウルフルズの大ファンで、ここで働くために地元の徳島から大阪に出てきたというOBの八木さんは、物心ついた頃から家族でウルフルズのライブに参加していた筋金入り。彼…別名「ウルフルボーイ」が、ライブ会場で集めまくったTシャツの展示会「ウルフルズのツアーTシャツ50枚ぐらい展 これをやらずして卒業できるか!」を開催。開催中は、ウルフルズファンだけではなく、彼に逢いに来る多くのファンも来店し大成功に終わりました。

彼らの自由なアイデアを尊重しつつも、お客さまや中津の人々に喜んで欲しいという思いだけでなく、収益につながることもきちんと考えて経営陣向けの提案書を作るように、と坂本さんは彼らにアドバイスしています。お客さまも自分たちも、皆が楽しく過ごし、さらに収益にもつながればなおハッピー、とさらりと話す坂本さん。社会にでて紆余曲折を経てからやっと気づくようなことを、アルバイトの間に経験できるなんて、ここはまるで、変化の激しい今の世の中で働く上で大切なノウハウを学ぶ、ある種の寺子屋のようです。

そんな坂本さんたちの取り組みに、名前をつけたのが「中津リバリュープロジェクト」です。中津の「再発見」という考えのもと、何か新しいことを始めるのではなく、たくさんのものを与えてくれた中津のまちの魅力に再度「光」を当てていくことをコンセプトにしていると坂本さんは言います。このプロジェクトを通して、坂本さんは、中津を舞台に活躍する様々な人々に出会うことが出来ているそうです。こうして生まれるネットワークが、次のアイデアにつながり、中津の潜在的な魅力が発信されてゆくのだと思います。

この活動は、坂本さんなりの恩返しのようなものだと言います。坂本さんの「店に恩返しがしたい」という言葉に対して、元カンテ三番街店の店長「シゲさん」は、「恩は返さなくていい、その想いを次に送ってくれ」と答えたのだそうです。この「恩送り」の精神が、坂本さんからメンバーに対して、お客さまに対して、そして中津のまちに対して広がりはじめています。現役アルバイトの伊東さんは、カンテの外に出て音楽イベントを開催してみたいと話します。彼の想いはとうとう中津も飛び出して、現在は本町の有名なブティックを貸切、限定クローズイベントの企画演出などもメンバーと計画中だとか。しかし、どこで活動しようと、「私たちはカンテ中津の人間である」という想いを持っているのだと話します。

 

【お店、そしてプロジェクトのこれから】

カンテ・グランデ中津本店、そして中津リバリュープロジェクトのこれからのあり方について、坂本さんは「今は、どこにいってもおいしい食事を味わうことができる時代。だからこそ、これからはそこに居る『人』の時代だと思う」と話します。

「どこまで脳みそを柔らかくしてアホになれるか?そして、守るべきところは何か?ということを考えながらやっています。『この指とまれ』に飛びつく子供みたいな、深く考えずにまず動くスピードと、その時の、何が起こるかわからない『ワクワク感』を大切にしています。」

もう一つ大切にされているのが音楽です。現在の店舗はマンションの地下にあるため、音楽イベントは一度途絶えてしまっていました。坂本さんは、もともとはタワーレコードの店員で元バンドマン。音楽が場に与える魅力、音楽のチカラを強く実感されていました。カンテで働き始めた頃、「ここは、とてもいい響きのある場所、生の音楽が足りない」と感じたそうです。そこで、当時の店長に相談を持ちかけ、アコースティック限定のイベントとしてカンテの音楽を復活させました。それが「中津サウンド・エキスポ」の始まり。この音楽イベントは月一の催しとして定着し、既に33回の開催を終えています。こうして音楽が復活した結果、近所のレコード店からレコードセットが寄贈されたそうです。制限のもと生まれたアコースティックな音楽イベントは、カンテを体現するものとして存在感を強めているようです。

坂本さんは、「いい食事と、いい音楽があれば、必ずいい仲間が集まってくる。その音楽の不思議なチカラを、僕らは真剣に信じている」と言います。

大好きなお店とその従業員、お客さま、そして「縁」する人の幸せを実現する基地「カンテ・グランデ」。おいしいチャイと食事、心地よい音楽、そして熱い志を持った人々が、これからも誰かの想いを新たなステージへ進めていくのでしょう。

 

 

文/中谷 美紗子(中津新聞)


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