中津新聞

2019.04.16

意志を貫くチャーミングな「アナーキスト」|美容室オーナー・福原香織さん


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今回、中津新聞が訪れたのは、中津商店街内にある美容室「BUNKA(ブンカ)」の福原香織さんです。
中津商店街を歩くと右手に見えてくる、青とも緑ともとれる際立った色の建物。デコボコとした手触りの壁には、「A」の形に特徴のある小さなステンレス製の看板「BUNKA」の文字が、きりりとシャープに浮き立っています。
扉を開けると全面緑で統一された店内で、その鮮やかな色彩にも負けない青い髪をしたひとりの女性が、笑顔で私達を迎えてくれました。

【一生に一度しかない人生、好きなことをやりきりたい!】
やっぱり気になるのは「どうしてこんなに緑なの?」という点。まずはこのお店を開くまでのお話を伺いました。

「BUNKA」を開店する前は、大きめの美容院で13年間働いていたという福原さん。長く続けた仕事の中で自分で立てた目標も概ね達成し、ひと区切りついたというときに、ずっと昔から思い描いていた「自分のお店をつくる」ということが頭に浮かんだそうです。
当初考えていたお店の要素は、白、グレー、シルバー、透明などの、シンプルでスッキリとしたテイストだったそうですが、あるとき海外旅行先で目にしたモロッコの風景に心を打たれたことで、これが180度転換しました。

それは「シャウエン」というまちを訪れたときのこと。道、建物、家の中まですべてが青く、それまでの自分の中にない発想で、大変な衝撃を受けたとか。
「『これで成り立つんや!』と、めっちゃかっこいいなと思って写真を撮ったりしていたんですけど、それで自分のやりたいのが(当初考えていた形のままだと、)ちょっとなんか違うなと。いろんな友達とかにも相談して、最終的に全部なにかの色にしようとなったんです。」

もともと、「海外旅行が大好き」という福原さんは、休みが4日しかない中、強行でインドに行ったこともあるほど。海外でその地の建物や人や文化に触れることで何かを吸収したり刺激を受け、改めて日本の良さがわかったりもするのだそうで、今回のお店づくりにはそれが大いに影響を与えたようです。

「自分では(お店を)ずっとやりたかったんで、それもおもしろいというか、『異空間』にしたくて。『一生に一度しかない人生やから、自分でやりたい!』みたいなところがすごい強くって。」

【緑一色。個性ある内装】
お店のイメージカラーとなった緑色。この色を選んだのは「特別に好きな色というわけではなく、家の中に緑が多かったから」という理由だけだと話す福原さん。店内を飾る小物類も、いくつか自宅から持ってきたそうです。でもこれだけインパクトのある色合いでも「不思議と落ち着く」とお客さんにも言われるそうで、意外なリラックス効果もあったようです。

こうしてモロッコのイメージと緑色を軸に、友人の大工さんや多くの人の関わりを得ながらお店はつくられていきました。奥にあるドアのデザインや、スタイリングチェアの革張りの色、ステンレスフレームの自立式のミラー。どれも友人知人に協力を受けアイデアをもらい、実際に自分たちで作り考えながら、ひとつひとつ形になっていったとか。中でも待合所のアクリル製の椅子を見つけたときにバシッとイメージが固まったようで、こちらが一番のお気に入りだそうです。
(アクリルが大好き、という福原さん。なんと名刺もアクリル製でした!)

「テーマが明確になったら、いろいろとじゃあこれも置きたいな、これもあるな、みたいなのに気づき始めたけど、それまでは迷走しまくってて自分でわからんくなって、吐くぐらい考えました(笑)。最終的に(自分のやりたい方向性に)行ききったところはありますね。
お客さんが来て、『おもろいな』みたいな、そういう感じが好きな人が来てくれるから、ま、それでいっか、みたいな。まぁお金はどうでもなるやろ、みたいな強気で(笑)。人生一度しかないから、やりたいこと形にしたいなって。」

店構えから、客層は尖ったスタイルを求めている方ばかり?というイメージをつい持ってしまいましたが、もちろんそうではない方や小さいお子さんも、様々おられるそうで。ただ共通することは、皆さんお喋り好きで、海外旅行の話を聞いたり、福原さんとお話することを楽しみに来られている方が多いようです。

【世界遺産と文化が好き】
お店のイメージづくりの源にもなった、海外の風景。福原さんが海外に興味を持ったきっかけは、6歳のときに、当時流行っていた世界遺産を取り上げるテレビ番組でマチュピチュ遺跡の特集を見たことだそうです。それ以降、世界遺産や古代文明が気になり始め、先日は数年来の想いが高じてついに3週間ものペルー旅行にも行ってきたとのことです。

「遺跡とか、空気感とか、布とか民族衣装とか。家の造りとか、地域によって全然違う感じで、ヨーロッパのようなところもあればレンガ造りもあって。2007年の大地震があって、石で造っている家は崩壊して今も復興できていなくてぐちゃぐちゃだったりするんですけど、そういうところを見たりして・・・」

実は中津に興味を持ったきっかけも、そのことに通じているのかも?
「夜、仕事を終えて帰るときに、破れたアーケードの隙間から梅田の超高層ビルが見え、それがファンタジー映画やゲームの世界にいるような感覚になる」と教えてくれました。現実世界とは別の空間に感じる・・・それがまるで遺跡にいるかのような気持ちになるそうです。
今度は、そんな中津との関わりについて聞いてみました。

【パワースポット・中津】
そもそも中津に興味を持ったきっかけは、5年ほど前に友人との間で流行っていた「遊び」からだとか。ちょっとディープなところに行って、アンティーク系の家具店など気になった面白いところを見て、雑誌風に撮る。そんな「編集ごっこ」をして遊んでいたときに、中津の高架下をまず知ったそうです。

「今は工事でなくなってしまったんですけど、めっちゃ良くて。その時から、色んなところを見ていて、中津だけじゃないんですけど、自分の好きなことを人目を気にせずにできるっていうのがすごいかっこいいなと。やっぱりいろいろな道があると思うんですけど、自分のやりたいようなことを実現できるっていうのって、すごいなーと思ってて。」

福原さん自身も、好きなことや今のお店のイメージを表現したいと考えたときに、ここしかなかった、と言います。
「勝手なインスピレーションだと思うんですけど、この昭和(の雰囲気)に、こういうのをバーン!と入れて、でもなんかこう、融合したいというか。ここなんか戦前からあるって言うてたんで、その雰囲気の中でもこういうところがあって。『合ってないけど合ってる』みたいな、地域に馴染んでるみたいなところが面白いかなって思って」
当初は西田ビルも出店場所の候補になっていたそうですが、やはりこの商店街の雰囲気にこそ、福原さんが求めるイメージと重なるものがあったようです。

海外ではホステルに泊まるときなど、様々な人の関わりにお世話になっていると実感したり、フレンドリーさがあるけれど、日本では同様のスタイルを持っている場所でもまだそこまでの関わり合いを感じられたことは少ないそう。そういう点では、中津の方々は本当にフレンドリーで「海外の方みたい」と感じるそうです。

「(斜め向かいの駄菓子屋「丸繁商店」の)福本さんもここを開けて、『こんにちはー』とか言って来てくれたりするんですよ、お菓子くれたりとか。『元気-?』みたいな。そういうのって面白いじゃないですか。すごいあたたかいの、私まだ来て1年も経っていないのに、お店やる前から皆声かけてくれて。」

常連客として来てくれるお子さんたちの中でも、福本さんのお店で駄菓子を買ってからBUNKAさんで髪を切り、ウステトパンさんでパンを買って帰る、というコースが定番になっているそうです。そんなふうに人と人、お店とお店が自然と繋がれるフレンドリーさは、なるほど海外に通じるものがあるのかもしれませんね。

それでも、「ここには住みたくない」と福原さんは言います。その理由は、実は商店街のある中津3丁目は、隠れた「パワースポット」なのだとか。だからこそ、自分の中では神聖な場所であるここを生活の場所にしたくないという気持ちがあるそうです。でもそれ以外にも、パワーの源がまだあるようで・・・。

「ここに住む人は、パワースポットの要素なのかも。この辺に住んではる人って、めっちゃエネルギッシュで、新しいのを嫌がらないんですよ。前衛的なおばあちゃんが多いみたいな。アート寄りな感覚を持ってはる方が多くて、ファッションもめちゃめちゃオシャレやし、気使ってはるし、めちゃめちゃ応援してくれて、それもお母さん的な応援の仕方じゃなくて、違うとこから見てアドバイスくれるみたいな人が多いんですよ。『地元に住んでて普通に見守ってくれる』じゃなくて、プラスアルファ自分の目で見て、意見くれはるみたいな。」
仕事で毎日来ることが楽しい、エネルギーが貰える場所だと、嬉しそうに話してくれました。

【自由なスタイルで働き、人が関わりを持てる場所を作りたい】
現在、お店の2階(こちらは全面青!)では、友人2人がまつげエクステとネイルのサロンをそれぞれされていて、1階では美容師の方がもう1人と、福原さんを含め4人の方が各自の顧客を持ち、この場所で働いているそうです。

「みんなが違う仕事してるんで、働きたいときに働けるスタイルっていうのを作っていきたいなっていうのがあって。会社に入るとそういう事もできないし、やりたいことやりながら、仕事もやりたいことをできる環境みたいなのをもっともっと大きくしていければ。女の人が働く時代になっていると思うし、やりたいことができる環境をもっと作っていきたいなと思ってて。」

ヨガをやっているお客さんとコラボしたり、ユースホステルのような、年齢や性別、国籍関係なく、いろいろな人が集まって関わりを持てるような場所を作りたい。美容師以外にもやりたいことはたくさんあり、どんどんと看板を広げていけたらいいな、と考えているそうです。

では今後の中津にはどうなっていってほしい?と最後に問いかけると、いわゆる『流行』にはなってほしくないとの答えが返ってきました。
「この感じを残しながらも、ほんとにこだわりじゃないですけど、『これは好きでやってる』みたいな人たちが集まるようなところになったらいいかなーって。でもなおかつこだわりに凝り固まってるわけじゃなくって、それを広めていきたいな、みたいな。」

近隣エリアの開発もあり来訪者や外国人も増えると予想される中で、地域の人々のあたたかさや日本の古き良きところが残っているということを来た人に感じてもらえるようにしていければ、という想いを語ってくれました。

「撮られるのは苦手、緊張する~!」と照れながらも、終始素敵な笑顔で気さくにインタビューに答えてくれた福原さん。
「お客さん一人ひとりと向き合ってお話をしながら全部自分でやりたい!」と話されるその姿からは、「その人を知った上で最適なスタイルをつくりたい」という強い想いと、何より「人が好き!」という人懐っこいお人柄が伝わってきました。

「BUNKA」という店名は、「歴史や海外の『文化』が好きだからつけた」ということですが、この看板のデザインにも実は福原さんの想いが込められています。
横棒が突き抜けた「A」の形――この形にしたのは、「anarchy(アナーキー)」という言葉が持つ意味から。「自分のやりたいことを貫く」であったり「突き抜けたい、社会に収まりたくない」。そんな気持ちが込められた小さな看板は、アーケードの隙間から射す光を浴びながら今日もキラリと輝いていました。

文/太田 友理子(中津新聞)


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