中津新聞

2019.03.02

中津の皆様へ。「私たちのまちづくり提案」発表会|大阪工業技術専門学校 建築設計学科


2月6日、津福祉会館で開催された大阪工業技術専門学校の学生による「私たちのまちづくり提案」が中津福祉会館で開催されました。発表したのは、第5回インタビューでご紹介した設計事務所「SPACESPACE」岸上純子さんの教え子のみなさんです。



学生達が中津の特定の地域を対象として、フィールドワークによる調査で見えた課題に対して、解決のためのプランを「ヒト・モノ・コト」の要素と建築の視点から練り上げ発表する、というもので、この課題に取り組まれている方たちは、大阪工業技術専門学校のリカレントクラスである建築設計学科の一年生です。

リカレントとある通り、この学科は大学卒業や社会人生活を経て、未来のまちや暮らしに関わる仕事力を本気で身に付けるための学びを始められた方々で構成されています。調査から企画立案まで一年をかけて行われたこの課題発表。学生や建築家という目線から中津はどう見えるのでしょうか?

【食べ歩きで、路地の魅力を発見】


一つ目のグループ「UA」のアイデアは、「中津の魅力発見」のための取り組みとして、まちの全域をフィールドとした食べ歩きイベントを行い、中津の魅力あふれる場所と食を体感。そして食べ歩きする人々が、中津のにぎわいと活気を作るというものでした。

私有地も建設中現場も、おかまいなしにみんなの食卓にしてしまおう、というエキセントリックな発想に引き込まれました。確かに中津は個性的でとてもおいしいレストランの宝庫です。このまちの進化に、やはり「食」の要素は欠かせないのかもしれません。

【まちの課題「防災」をゲームを通じて学ぶ】


二つ目のグループ「Linking」では、住民へのインタビューと路地の動線調査から、複雑な路地ゆえの課題として災害時の移動におけるリスクが挙がりました。その解決のためのアイデアから、「防災意識を高めるための迷路ゲーム」を発表されていました。

中津の住民同士のコミュニケーション機会を増やし、また子供たちの遊び場としても機能する、まちの路地を会場にしたオリエンテーリングのようなイベントです。防災において重要な動線の整備は、レトロな街並みには表裏一体のようについてくる大きな課題なのだと思います。Linkingの発表のように、ソフトの力が問題解決の鍵となってくるのだろうか、と思いました。

【明かりで街並みをつなぐ】


最後のグループ「How 2」の発表プランは、今ある環境に繋がりを持たせ、まち全体をゆるく結ぶという発案でした。夜間は暗く人通りも一気に少なくなるという不安の声も解消する案として、「明かり」に着目。フィールド調査から見えてきた「家の周りに物を置きがち」な中津の住民の生活スタイルを活用し、暗い道沿いに手作りの灯篭を設置してもらいます。足元を照らすとともにエリア同士を明かりで繋ぐことができるというものでした。

灯篭の設置場所はフィールド調査のもと選出され、暗闇によって断絶されている場所に焦点が置かれています。この仮設の灯篭は簡単な材料と道具で作れてしまうシンプルなものであるのに、とても洗練された外観で驚きました。このようなまちづくりの取り組みに美し
いデザインが合わさると、その効果もより印象的に見えると思います。

【建築の力を未来のまちに活かす】


学生ゆえの自由な発想はどれも聞いていてワクワクするものでした。一方で建築設計という、アイデアの具現化を得意とするバックグラウンドのもとで生まれるプランは、地に足の着いた、現実に即した非常に身近なものに感じられます。

まちづくりにおいて、創造力を働かせて未来のまちにとって魅力的なアイデアを打ち出すことと、実現へむけて考えられる障壁への具体的な対策がどちらも必要だと思います。い
わゆる右脳的な要素と左脳的な要素、どちらが欠けてもいけないこの分野において、建築と
いうアプローチは強力なツールになるのだと発表を聞いて感じました。

このプレゼン発表の審査員は、中津の住民代表とも言える市議会委員、地域活動協議会、コミュニティスペースの運営者、そして大阪工業技術専門学校の教員と、実際に中津で活躍されている方たちで構成されていました。まちの方々にアイデアを直接伝え、「発生するゴミの問題はどう解決しますか?」「この企画を日常風景として根付かせるために何が必要だと思いますか?」といった、リアルタイムでの鋭い意見が学生達に還ってきます。まさに、実際のまちづくりのフィールドで実現するときにぶつかる壁を、この時学生達は疑似体験しているような状況なのだと思います。

プレゼンを終えた学生へのコメントで、「プランの魅力をいかにパブリックなものに昇華させるのか、が建築デザインの力です」という言葉が印象的でした。魅力あるイベントを期間限定の特別なものではなく日常に落とし込む、また一見面倒だと思われてしまいそうなことがらを皆が自然とこなしてしまうように仕掛けるなど、言葉とは違うデザインの可能性を感じました。


2年前、この発表会で誕生した「中津ぼんぼり祭り」は、2回の開催を経て随分中津に馴染んでいるようです。かつて行われていた地蔵盆の復活という提案を基にしたお祭りなので、「帰ってきた」という表現が適切なのかもしれませんが、学生のプランを実現するところまで受け入れる懐の深さは、中津のまちの大きな特徴だと感じました。ところで、発表者の中には外国人留学生も見られましたが、「生まれた国と違うのに、中津の長屋の風景に懐かしさを感じる」発言に、中津のまちは出身国に関係なく人々の心に響く根源的な魅力があるのかも!?とも感じました。

現在、中津の周囲はうめきた2期をはじめとするハード面での開発が進んでいます。その一方で、中津の地域住民を中心としたソフト面での取り組みも注目を集めています。学生達の地道なフィールド調査と柔軟な発想が、中津の文化に新たな彩りを加えることが楽しみです。

 

文/中谷 美紗子(中津新聞)


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